薬剤耐性アシネトバクター感染症

山口県感染症情報センター 2012.6作成
2022.9.21更新

薬剤耐性アシネトバクター感染症とは

 広域β-ラクタム剤、アミノ配糖体、フルオロキノロンの3系統の薬剤に対して耐性を示すアシネトバクター属菌による感染症です。 アシネトバクター属菌は土壌や水の中など自然環境中にみられる弱毒細菌で、健常者もわきの下、股間、足指の間などの皮膚に保持していることもありますが、 通常病原性を示しません。 感染防御機能の低下した患者には容易に菌が定着し日和見感染(健康人であれば通常感染を起こさないような 平素無害、または弱毒の微生物によって易感染性宿主に感染すること)します。 平成23年2月1日から月単位の基幹点把握疾患として新たに報告対象となり、 平成26年9月19日からは全数届出対象疾患となりました。

症状

 肺炎の他、敗血症、尿路感染症、髄膜炎、創部感染症など多彩な感染症を起こします。

治療

 治療が必要と判断された場合、 抗生物質の投与を行いますが、その選択や投与量については確立されていません。

予防

 通常、感染の流行は集中治療室の患者やその他の重症患者で起こり、医療機関の外で起こることは滅多にありません。 アシネトバクター属菌は環境中で長期間生存し、 汚染された器具や物品、医療従事者の手を介した感染も多いので、 使い捨て手袋の使用と手洗い、消毒の徹底など施設内感染対策も重要です。
【ハイリスク患者】
 集中治療室で人口呼吸器を装着されている患者、慢性閉塞性肺疾患(COPD)・糖尿病・ガンなどの基礎疾患を有する場合など、免疫機能が低下した患者は注意が必要です。
【消毒】
 エタノールや50%以上の濃度のイソプロピルアルコール等のアルコール系消毒薬が有効です。

参考文献

1)国立感染症研究所: 薬剤耐性アシネトバクター感染症