経過・症状
感染から約3週間ほどで感染部位(性器や口腔内など)の皮膚や粘膜に痛みのない潰瘍が形成され、2〜3週間で自然に消失しますが、治療しなければ病原体は体の中で増え、感染から約3か月経過すると全身の皮膚と粘膜にバラ疹と呼ばれる発疹が生じます。バラ疹は、痛みやかゆみはありませんが放置すると数年後には、血管や神経の障害等、全身に様々な症状を引き起こし、治療が困難となります。
また、妊婦が感染すると、早産や死産、胎児の重篤な異常につながる可能性があります。
検査・治療
適切な抗菌薬による早期の治療で完治が可能ですので、感染を疑う症状がある場合は、早期に医師の診断・治療を受けることが重要です。管轄の保健所で検査を受けることもできます。(保健所検査日程 ※事前連絡が必要です)
予防
感染予防には、感染部位と粘膜や皮膚を直接接触させないよう、コンドームを使用することが勧められますが、コンドームが覆わない部分の皮膚などでも感染の可能性があり、100%の予防はできないため注意が必要です。以前に梅毒にかかった人には一定の免疫(抗体)がありますが、再感染を予防できるものではありませんので、適切な予防策(コンドームの使用、パートナーの治療等)が取られていなければ、何度でも感染する可能性があります。
山口県の梅毒発生状況
関連リンク
ヒトメタニューモウイルス(human metapneumovirus:hMPV)感染症(hMPV感染症)は、hMPVを原因病原体とする乳幼児に多い急性呼吸器ウイルス感染症です。2001年にvan den Hoogenらにより小児の気道分泌物から分離されました。
このウイルスは免疫健常児、免疫不全児のどちらにおいても、呼吸器感染症の主要な原因となります。
感染及びその拡大を防ぐには、マスクの着用、うがい・手洗いの励行など、飛沫感染及び接触感染対策が重要です。なお、ワクチンはありません。
注目の背景
hMPV感染症は、感染症法で定める届出対象(小児科)であるRSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)感染症とともに、高齢者等の成人での発生もあることが知られていますが、現在、感染症法で定める届出対象となっていません。
その中で、2022年の沖縄県の症例に係る調査では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による市中感染対策により、特に飛沫感染を起こす呼吸器ウイルス感染症に係る報告数は激減したものの、小児においても多様な呼吸器ウイルス感染症への曝露機会が減少したと考えられました。それにともなう集団としての初感染、免疫獲得の遅れとして影響を受けたことにより、それらの病原体への小児の罹患年齢が上昇した可能性が指摘されるなど、hMPV感染症を含む、新型コロナウイルス感染症以外の呼吸器感染症の流行の実態把握の重要性が示唆されました。(国立感染症研究所 COVID-19流行下の小児基幹病院における当院に入院した重症ヒトメタニューモウイルス感染症の状況)
そこで山口県では、2022年10月31日から、小児科定点医療機関からhMPV感染症の発生報告(疑わしい臨床症状があり、迅速診断キット等によって判定されたもの)を受け、発生状況の把握を開始しました。
山口県のヒトメタニューモウイルス感染症発生状況
山口県の呼吸器感染症発生状況(参考)
山口県における呼吸器感染症の発生状況は以下のとおりです。
報告の多くを占める呼吸器感染症として、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、ヘルパンギーナ、ヒトメタニューモウイルス感染症の発生状況をグラフ化しています。以下の点に留意してください。
※2022年9月26日〜2023年5月7日の期間の新型コロナウイルス感染症の定点あたりの報告数は、全数把握データから当時の定点医療機関のデータを抽出して算出したものです。2023年5月8日以降の5類移行に伴い発熱外来体制や受診行動などの変化があるなど、報告数に影響している可能性があります。
※ヒトメタニューモウイルス感染症の小児科定点把握は2022年10月31日から開始したので、それ以前のデータはありません。
※グラフ中の呼吸器感染症のうち、インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症は「インフルエンザ/COVID-19定点」、RSウイルス感染症・咽頭結膜熱・A群溶血性レンサ球菌咽頭炎・ヒトメタニューモウイルス感染症は「小児科定点」であり、定点数が異なります。「インフルエンザ/COVID-19定点」は「小児科定点」及び「内科定点」です。
※ヒトメタニューモウイルス感染症は山口県独自調査において小児科定点医療機関から報告を受けているため、定点あたりの報告数を「報告数/小児科定点数」で算出していますが、定点サーベイランスとしての精度を十分に評価したものではありません。
呼吸器感染症関連リンク
2022年5月以降、従前から流行が報告されてきたアフリカ大陸の国々(以下、常在国)への渡航歴のない患者が、欧米を中心に相次いで報告され、常在国外では前例のない流行となっています。 世界的なサーベイランス体制が十分整っていないことから、水面下で感染が広がっている可能性があり、今後も感染者の報告が続く可能性が指摘されています。
2023年12月13日、厚生労働省は、国内初の死亡患者例が確認されたことを発表しました。(厚労省報道発表)
エムポックスに関する情報は、次のページをご覧ください。
※2023年5月26日、感染症法上の名称が「サル痘」から「エムポックス」に変更されました。
関連リンク
病原体を保有するダニを原因とした感染症のうち、県内での患者数が多い感染症の発生状況は以下のとおりです。
「ダニ媒介性疾患の予防について」のページもあわせてご参照いただき、感染予防を実施してください。
2013年1月30日、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome: SFTS)の国内初症例(山口県内で2012年秋に亡くなられた成人)が確認されました。(国立感染症研究所の報告:IASR 2013年2月号)
サイト内の過去の記事
山口県のSFTS発生状況
SFTSのヒト-ヒト感染症例
国内初のヒト-ヒト感染症例が、2024年3月19日付け国立感染症研究所IASRにおいて報告・掲載されました。医療現場におけるヒト-ヒト感染予防対策の徹底においては、以下を参考としてください。
SFTS関連リンク
1984年に国内で初めて患者が確認され、山口県内では、2010年6月25日に初めて患者が報告されました。
日本紅斑熱の症状等はこちらをご参照ください。
山口県の日本紅斑熱発生状況
劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome: STSS)は、突然発症し、ショックと多臓器不全が急速に進行する重症感染症であり、感染症法に基づく感染症発生動向調査において5類全数把握疾患と定められています。その死亡率は30%以上とされていますが、重症化するメカニズムはまだ解明されていません。
病原菌・症状
STSSは、通常無菌の部位(皮膚軟部組織、胸膜、髄膜など)に溶血性レンサ球菌(A群、B群、G群など)の毒素産生株が感染することで発症します。
診断・治療
発生動向
国内におけるSTSSの発生状況は、2023年の届出報告数は941人と過去最多でした(2番目はCOVID-19流行前の2019年)が、2024年6月時点の届出報告数は2023年の届出報告数をすでに上回っています。(厚生労働省 劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)(厚生労働省HP))山口県においても、2023年の届出報告数は12人と過去最多でした。
2023年12月には、A群溶血性レンサ球菌(group A Streptococcus GAS, Streptococcus pyogenes)によるSTSS症例が増加傾向にあり、2023年7月以降、50歳未満の報告数及び死亡数割合が増加したことが報告されました。同時に、GAS咽頭炎の定点あたりの報告数の増加、UK系統株の地域集積も認められましたが、相互関連は不明とされています。
2024年3月には、国内発生状況更新・リスク評価がとりまとめられ、2024年6月には、さらに国内外の発生状況が更新されています。
山口県内のSTSS発生状況は以下のとおりです。
STSS関連リンク
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