β-ラクタム剤、アミノ配糖体、フルオロキノロンの3系統の薬剤に対して耐性を示す緑膿菌による感染症です。 緑膿菌は水回りなどの生活環境中に広く常在する弱毒細菌で、健常者には通常病原性を示しません。 感染防御機能の低下した患者には容易に菌が定着し日和見感染(健康人であれば通常感染を起こさないような 平素無害、または弱毒の微生物によって易感染性宿主に感染すること)します。 また、抗生物質服用者からも検出されます。
2012年から2021年の各年における定点当たりの累積報告数の比較です。
敗血症や骨髄、気道、尿路、皮膚、軟部組織、耳、眼などに多彩な感染症を起こします。
感染症の症状を呈しない場合は、 除菌のための抗生物質投与は基本的に行いません。 症状があり、血液や腹水などの無菌部位から菌が分離された場合、易感染性患者においては 感受性がある抗生物質の投与が行われます。
緑膿菌は流し台、入浴施設の水回りなど生活環境中に広く常在しますので、
特に水回りを中心に清潔や消毒を心掛け施設内の環境を汚染しないようにしましょう。
また、
汚染された器具や物品、医療従事者の手を介した感染も多いので、
使い捨て手袋の使用と手洗い、消毒の徹底など施設内感染対策も重要です。
【ハイリスク患者】
抗生物質長期服用者や術後や血液疾患やガンなどの基礎疾患を有する場合など免疫機能が低下した患者は注意が必要です。
【消毒】
エタノールなどで消毒が可能です。
ベンザルコニウム塩化物(逆性石けん)は効かないことがあります。
また、クロルヘキシジンは無効のみならずその中で増殖するので、使用しないようにしましょう。
1)国立感染症研究所
薬剤耐性緑膿菌感染症とは:
2)山崎修道監修,小早川隆敏編集:新版 感染症マニュアル:2004.
3)吉田製薬文献調査チーム:消毒薬テキスト第3版:2008.
4)薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2017:薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会
5)薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2021:薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会