令和3年10月13日 更新

ダニ媒介性疾患の予防について

マダニ類やツツガムシ類は、野外のやぶや草むらなどに生息しているダニです。「ダニ」といっても、食品等に発生するコナダニや衣類や寝具に発生するヒョウヒダニなど、家屋内に生息するダニとは種類が異なります。人は農業・林業などの野外作業やアウトドアレジャーの際にマダニ類・ツツガムシ類に刺されることがありますが、これらのダニは病原体を持っていることがあり、刺されると日本紅斑熱やつつが虫病などの感染症にかかる危険性があります。これらの疾患にかからないようにするために、野外でのダニ対策が重要です。

ダニに刺されないために

ダニ(マダニ類、ツツガムシ類)は、山林、草地、荒地に生息している他、犬や猫などの動物に付いて移動することもあるので、公園や住宅地の庭でも注意が必要です。やぶや草むらなどのダニの生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴下・靴、帽子、手袋を着用し、首にタオルを巻く等なるべく肌を露出しないようにしてください。衣服の中に入り込んだダニに(腹部などを)刺される例も多いようです。裾からダニが入りこみにくいような服装がよいでしょう。

マダニ対策、今できること 」(国立感染症研究所)は、マダニ対策について、イラストを用いてわかりやすく説明しています。

ダニに刺されたら

ダニに刺されても、痛みや痒みはあまりなく、気づかないことが多いようです。野外活動後の着替え時などに、体にダニが吸着していないかどうかを確認してください。

放置すると数日間以上吸着して吸血し続けますので、みつけたら早めに取り除くことが肝心です。 ダニが付着して病原体が入るまでに2日程度要し、簡単に取れないことが多いので、できるだけ早く医療機関(皮膚科)を受診し、処置してもらって下さい。

刺されてからしばらくして(数日〜2週間程度)発熱等の症状が出た場合には、医療機関を受診し、ダニに刺されたことを告げてください。 日本紅斑熱やつつが虫病には、有効な治療薬があります。

ダニ予防のポイント

@ダニに咬まれないことが重要です。
A山や野原の他、公園、住宅地の庭などにもダニがいることがありますので、剪定や草取り等の際には注意してください。
Bやぶや草むらなど、ダニの生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴下・靴を着用等、肌の露出を少なくすることが大切です。
C屋外活動後にはダニに咬まれていないか確認してください。帰宅後すぐに服を着替えたり、体をシャワーで洗い流すと有効です。
Dやぶ等で、犬や猫などの動物にダニが付くことがあります。除去には、目の細かいクシをかけると効果的です。ダニ駆除薬もありますので獣医師に御相談ください。
E吸血中のダニに気がついた際には、できるだけ医療機関で処置してください。(自分でダニをつぶさないようにしてください)
Fダニに咬まれた後に、発熱等の症状があった場合は、医療機関を受診してください。

日本国内の主なダニ媒介性疾患

重症熱性血小板減少症候群(SFTS) 病原体はSFTSウイルス(ブニヤウイルス科フレボウイルス属)、マダニ類が媒介します。 ヒトヘの感染は、マダニの刺咬によるものが主ですが、感染したペット動物(ネコ、イヌ)に咬まれるなどして感染したとみられる事例もあります。 症状は、発熱と消化器症状(嘔気、嘔吐、下痢など)が中心で、血液検査所見として血小板減少や白血球減少などがみられます。 平成25年1月のに日本で初めて山口県内での報告があった後、西日本を中心に発生が報告され、年々増加傾向にあります。 令和3年には静岡県や愛知県においても事例が確認されるなど、SFTSはこれまで確認されていたより広い地域で潜在的に存在することが明らかになりつつあります。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)(国立感染症研究所)

日本紅斑熱 病原体は日本紅斑熱リケッチア(Rickettsia japonica )、媒介ダニはマダニ類(キチマダニ、フタトゲチマダニなど)です。症状は、高熱と紅斑などです。主として西日本でみられ、山口県内でも患者報告があります。

つつが虫病: 病原体はつつが虫病リケッチア(Orientia tsutsugamushi )、媒介ダニはアカツツガムシ属(アカツツガムシ、フトゲツツガムシおよびタテツツガムシ等)です。症状は、発熱、発疹、リンパ節の腫脹などです。全国的(北海道等一部地域を除く)にみられ、山口県内でも患者報告があります。

ライム病: 病原体はボレリア属細菌(Borrelia garinii 等)、媒介ダニは主としてシュルツェマダニです。症状は、初期には遊走性紅斑や発熱、後に様々な神経症状等を示します。北海道や本州中部以北での発生が主で、今のところ山口県内での感染例はありません。

ダニ媒介脳炎: 病原体はダニ媒介脳炎ウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)で、媒介ダニはマダニ類です。 症状は、中央ヨーロッパ型ダニ脳炎は、発熱、筋肉痛などのインフルエンザ様症状などで、ロシア春夏脳炎は、高度の頭痛、発熱、悪心などです。 国内では、これまで北海道で5例が報告されています。

エゾウイルス感染症: 病原体はエゾウイルス(ナイロウイルス科オルソナイロウイルス属)です。2019年に北海道でマダニと推定される虫による刺咬後に発熱と下肢痛を主訴とした患者から検出された新規のウイルスです。 国内では、北海道の過去の検体を確認したところ、5例の陽性者があり、2014〜2020年に合計7例の感染者があることが判明しています。 北海道内のマダニの遺伝子の調査等でもこのウイルスが検出されており、マダニによって媒介されるウイルスで北海道内に定着していると思われます。 これらの感染者は、マダニに刺されて数日後〜2週間後に発熱、血小板減少、白血球減少などを示しています。
最近のダニ媒介感染症の国内の発生状況について(厚生労働省 R3.9.22)
北海道におけるエゾウイルス熱を発見(北海道大学 R3.9.22)
北海道における新規オルソナイロウイルス(エゾウイルス:Yezo virus)によるマダニ媒介性急性発熱性疾患の発見(IASR Vol. 41 p11-13: 2020年1月号)

主なダニ

ダニは、節足動物の中のクモ綱ダニ目に属する生物です。

マダニ類: マダニ亜目マダニ科に属するダニの総称です。ダニの中では大きな部類で、吸血していないものは1mmから1cm程度ですが、吸血すると数倍になるものもあります。国内では約50種が知られており、県内にも多くの種類が生息しています。マダニ類は全て吸血性ですが、よく人を刺し吸血するのは、ヤマトマダニ、シュルツェマダニ、フタトゲチマダニ、キチマダニ、タカサゴキララマダニ等です。活動が盛んな季節は種により異なりますが、一般的に、春、夏、秋に人をよく刺します。

ツツガムシ類: 体長0.5mm以下の微小なダニです。国内では100種類以上が知られていますが、人を刺すのはごく一部で、その内つつが虫病の媒介が確認されているのは、ツツガムシ科アカツツガムシ属のアカツツガムシ、フトゲツツガムシおよびタテツツガムシ等です。これらのツツガムシは、幼虫期に一回のみ人(自然界では野ネズミなど)を刺してリンパ液を吸います。種や地域の気候により活動時期(人を刺す季節)が異なりますが、特に春と秋には注意が必要です。刺したツツガムシがつつが虫病リケッチアを保有していた場合には、刺された人はツツガムシ病に感染します。

その他、人の身近には多種多様なダニが生息しており、人に直接害があるダニとしては吸血するイエダニやトリサシダニ、疥癬の原因となるヒゼンダニなどがあります。また、室内に生息するチリダニ類はアレルギー性疾患の原因となります。これらのダニは、マダニ類・ツツガムシ類とは別の種類です。

問い合わせ先

ダニ媒介性疾患についてのお問い合わせは、 各健康福祉センター(保健所)・山口県健康増進課 で受け付けています。

※マダニのSFTSウイルス検査は、保健所や医療機関では、実施していません。全てのマダニがウイルスを保有しているわけではなく、また、ダニに咬まれると必ず感染するものでもありません。

このサイト内の情報

ダニ媒介性疾患の予防について(リーフレット)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
日本紅斑熱

関係リンク

ダニ媒介感染症(厚生労働省)

マダニ対策、今できること(国立感染症研究所)