RSウイルス感染症は、 RSウイルス(respiratory syncytial virus)による急性呼吸器感染症です。 従来、我が国では、冬季に流行がみられていましたが、最近は比較的早い時期から患者発生がみられる傾向があります。
ほとんどの小児が3歳までには感染し、一生の間再感染を繰り返します。 乳幼児において重要な疾患であり、 特に、生後数週齢から数ヶ月齢の新生児、早産児、心肺系の基礎疾患のある乳児で 重症となりやすい疾患です。
定点把握疾患報告数グラフ(山口県)のRSウイルス感染症の項目をご参照下さい。
潜伏期は2〜8日(典型的には4〜6日)です。 発熱、鼻汁、咳などの上気道炎症状がおこり、軽症の場合は感冒様症状にとどまります。 初感染の乳児では、約1/3が下気道炎(細気管支炎、肺炎)に進展するといわれ、 生後数週から数ヶ月の新生児、早産児、慢性肺疾患や先天性心疾患を持つ乳幼児では 重症化のリスクが高いといえます。 再感染を繰り返すので、年長児や成人も罹患しますが、 重症となることはあまりありません。
酸素投与、輸血、呼吸管理などの支持療法が中心です。
鼻咽頭分泌物にウイルスが存在し、
飛沫感染(咳、くしゃみなどにより飛び散った唾液や鼻水などを吸い込んで感染)
や接触感染(汚染された手指や物品を介した感染)
により伝播しますので、濃厚接触を避け、手洗いの励行等、
ウイルス感染症に対する一般的な予防法を行います。
【ワクチン・予防薬】
ワクチンについては、厚生労働省ホームページ(RSウイルス感染症Q&A)をご覧ください。
重症化予防効果のあるパリビズマブ(ヒト化抗RSV-F蛋白単クローン抗体:商品名シナジス)
が、重症化リスクの高い早産児や基礎疾患のある乳幼児に使用されています。
【消毒】
RSウイルスはエンベロープを有するウイルスであるため
消毒薬抵抗性は比較的弱く、アルコール、次亜塩素酸ナトリウムによる不活性化が期待できます。
1)国立感染症研究所感染症情報センター:RSウイルス感染症とは
2)国立感染症情報センター:ISAR 2008年10月号.
3)財団法人日本公衆衛生協会:感染症予防必携 第2版 2005.
4)国立感染症研究所学友会:感染症の事典 2004.
5)古泉快夫、芝田充男、林桂堂:ウイルス学サマリー 2003.
6)吉田製薬文献調査チーム:消毒薬テキスト第3版 2008.