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平成25年 12月 17日 更新

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

平成25年1月30日、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome: SFTS) の、日本国内での初めての症例(山口県内で平成24年(2012年)秋に亡くなられた成人)が確認されました。 その後、他の県でも患者が確認され、感染症法上の四類感染症に指定されました(平成25年3月4日)。

重症熱性血小板減少症候群とは

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、近年、中国の中央部等7省で流行が見られている疾患で、 2011年に初めて原因ウイルス(SFTSウイルス、ブニヤウイルス科フレボウイルス属)が 特定された新しい感染症です。症状は、発熱と消化器症状(嘔気、嘔吐、下痢など)が 中心で、血液検査所見として血小板減少や白血球減少などがみられます。現在のところ、 有効な抗ウイルス薬やワクチンはありません。 人はウイルスを持ったマダニに刺されて感染すると考えられています。 中国の調査では、マダニのウイルス保有率はかなり低いことが報告されています。

患者の発生状況

1.全国の状況
2013年12月13日までの国内の患者発生は49例で、そのうちの20例が亡くなられています。 患者発生報告のあった地域は西日本(兵庫県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、 愛媛県、高知県、佐賀県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県の13県)で、 患者の年齢は40歳代から90歳代、男性25例、女性24例でした。

これまでのところ、重症熱性血小板減少症候群は、西日本を中心に発生していますが、 国(厚生労働省研究班)が実施している調査では、患者発生のない地域でも、 マダニの調査や動物(シカ、イノシシ、猟犬)の抗体調査により、 SFTSウイルスの存在が確認されています。 (参考文献6

(1)国内での発生状況(平成25年(2013年)12月13日現在)
 県(県内累計)公表日年齢性別転帰発症時期または死亡時期
1山口県(1)H25.1.30成人女性死亡平成24年秋
2愛媛県(1)H25.2.13成人男性死亡平成24年秋
3宮崎県(1)H25.2.13成人男性死亡平成24年秋
4広島県(1)H25.2.19成人男性死亡平成24年夏
5長崎県(1)H25.2.2660歳代男性死亡平成17年秋
6高知県(1)H25.3.1280歳代女性生存平成24年4月
7長崎県(2)H25.3.1250歳代男性生存平成17年11月
8佐賀県(1)H25.3.1280歳代男性生存平成22年8月
9愛媛県(2)H25.4.560歳代女性生存平成24年12月
10鹿児島県(1)H25.4.8成人女性死亡平成25年4月(誤) 平成25年3月(正)
11佐賀県(2)H25.4.1060歳代男性死亡平成24年6月
12山口県(2)H25.4.1660歳代女性死亡平成25年4月
13山口県(3)H25.4.2360歳代女性生存平成25年4月
14徳島県(1)H25.5.1470歳代男性生存平成25年5月
15熊本県(1)H25.5.1771歳女性生存平成25年5月
16宮崎県(2)H25.5.2460歳代男性生存平成25年5月
17高知県(2)H25.5.2760歳代男性死亡平成24年11月
18長崎県(3)H25.5.2960歳代男性生存平成25年4月
19鹿児島県(2)H25.5.2950歳代女性生存平成25年5月
20広島県(2)H25.6.360歳代女性生存平成25年5月
21鹿児島県(3)H25.6.640歳代男性生存平成25年5月
22愛媛県(3)H25.6.1090歳代女性死亡平成25年5月
23愛媛県(4)H25.6.1050歳代男性生存平成25年5月
24愛媛県(5)H25.6.1070歳代女性生存平成25年5月
25高知県(3)H25.6.2570歳代男性死亡平成25年5月
26熊本県(2)H25.7.186歳女性死亡平成25年5月
27岡山県(1)H25.7.1280歳代女性死亡平成25年7月
28愛媛県(6)H25.7.1270歳代男性生存平成25年6月
29長崎県(4)H25.7.1750歳代女性生存平成25年6月
30島根県(1)H25.7.1980歳代女性生存平成25年7月
31宮崎県(3)H25.7.2280歳代女性死亡平成25年7月
32山口県(4)H25.7.2390歳代女性死亡平成25年7月
33岡山県(2)H25.7.2380歳代女性生存平成25年7月
34鹿児島県(4)H25.8.550歳代男性生存平成25年7月
35兵庫県(1)H25.8.670歳代女性生存平成25年7月
36兵庫県(2)H25.8.980歳代女性死亡平成25年5月
37愛媛県(7)H25.8.970歳代女性生存平成25年7月
38宮崎県(4)H25.8.1560歳代女性生存平成25年7月
39鹿児島県(5)H25.8.2380歳代男性生存平成25年8月
40徳島県(2)H25.9.280歳代女性死亡平成25年8月
41広島県(3)H25.9.270歳代男性生存平成25年8月
42宮崎県(5)H25.9.580歳代女性生存平成25年8月
43愛媛県(8)H25.9.1390歳代男性死亡平成25年8月
44広島県(4)H25.10.1770歳代男性生存平成25年9月
45広島県(5)H25.10.2560歳代男性生存平成25年10月
46熊本県(3)H25.11.1184歳男性死亡平成25年10月
47熊本県(4)H25.11.2565歳男性生存平成25年11月
48宮崎県(6)H25.12.1370歳代男性生存平成25年11月
49愛媛県(9)H25.12.1360歳代男性死亡平成24年4月

(2)県毎の集計
県名生存死亡
山口県134
兵庫県112
島根県1 1
岡山県112
広島県415
徳島県112
愛媛県549
高知県123
佐賀県112
長崎県314
熊本県224
宮崎県426
鹿児島県415
292049

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(3)年齢集計
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(4)月別集計
患者の発症月別の集計です。夏、秋としているものは月別不明もの。 発症月が不明の場合は死亡月で計上しています。
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参考文献5によると、 ウイルス遺伝子の分析結果からは、中国のウイルスとは遺伝子レベルで若干異なっており、 患者は国内で感染したものと考えられました。

2.中国の状況
参考文献 1 によると、SFTSと診断された中国中央部・東北部の2010年の患者(154名)は、 年齢層は中高年で(39歳〜83歳)、女性86名、男性68名でした。 ほとんどの患者(150名/154名)が森林・丘陵地に住む農業従事者でした。 発症時期は、多くが5月〜7月(148名/154名)でした。

感染源と感染予防

SFTSウイルスは、国(厚生労働省研究班)の調査で、フタトゲチマダニ、ヒゲナガチマダニ、 オオトゲチマダニ、キチマダニ及びタカサゴキララマダニからSFTSウイルス遺伝子が検出されており、 今のところ患者が報告されていない地域でもSFTSウイルス保有マダニが確認されています (参考文献6)。 中国では、フタトゲチマダニ、オウシマダニからウイルスが検出されています (参考文献1)。

SFTSにかからないためには、マダニに刺されないように注意することが必要です。 マダニの生息するような場所(草むらや藪など)に行く場合には なるべく肌を露出しない服装とし、後で、マダニが体に付着、あるいは マダニに刺されていないかどうかを確認してください。 「マダニ対策、今できること」 (国立感染症研究所)は、マダニ対策について、イラストを用いてわかりやすく説明しています。

マダニは野外に生息する大型のダニです。 屋内に生息するダニ(コナダニ類・チリダニ類など)はこの疾患とは関係ありません。

マダニからの感染のほかには、患者の血液等に直接接触したことによる感染が報告されています (参考文献4)。 今のところ国内では、二次感染事例はありませんが、患者の血液等体液や排泄物は、 感染性があるものとして、十分な注意が必要です。 (参考文献7

マダニに刺された場合

マダニが皮膚に吸着しているのを発見した場合は、できるだけ医療機関(皮膚科) で除去してもらってください。無理に取ろうとして虫体を押しつぶした場合、 マダニの体液が人の体内に入り感染の危険性が増加します。 また、マダニの一部が皮膚内に残ると、化膿することがあります。

マダニに刺された場合は、その後の体調に注意してください。 SFTSの潜伏期間は6日〜2週間程度だといわれていますので、 2週間後くらいまでに発熱等の症状があらわれた場合は、医療機関を受診してください。

関係リンク

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について 厚生労働省
 ・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A
重症熱性血小板減少症候群(SFTS) 国立感染症研究所
SFTSについて医療関係者が知っておきたいこと 国際感染症センター(国立国際医療研究センター)

参考文献

1.Fever with Thrombocytopenia Associated with a Novel Bunyavirus in China Xue-Jie Yu, et al. N Engl J Med 364:1523-1532, 2011
2.Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome Virus, Shandong Province, China Li Zhao, et al. Emerging Infectious Diseases 18 (6), 2012
3.The Ecology, Genetic Diversity, and Phylogeny of Huaiyangshan Virus in China Zhang YZ, et al., J Virol 86: 2864-2868, 2012
4.A Family Cluster of Infections by a Newly Recognized Bunyavirus in Eastern China, 2007: Further Evidence of Person-to-Person Transmission Chang-jun Bao, et al. Clin Infect Dis. 53 (12): 1208-1214, 2011
5.IASR 国内で確認された重症熱性血小板減少症候群(SFTS)患者8名の概要(2013年3月13日現在)
6.IASR 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスの国内分布調査結果(第一報)(2013.8.29)
7.IASR 山口県の一医療機関における重症熱性血小板減少症候群症例の接触者調査(2013.9.24)

国内で初めての患者報告(厚生労働省および山口県より)

厚生労働省 平成25年1月30日 報道発表
中国で近年報告されている新しいダニ媒介性疾患の患者が国内で確認されました

山口県 平成25年1月30日 報道発表
「重症熱性血小板減少症候群」の症例確認について