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重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、近年、中国の中央部等7省で流行が見られている疾患で、 2011年に初めて原因ウイルス(SFTSウイルス、ブニヤウイルス科フレボウイルス属)が 特定された新しい感染症です。症状は、発熱と消化器症状(嘔気、嘔吐、下痢など)が 中心で、血液検査所見として血小板減少や白血球減少などがみられます。現在のところ、 有効な抗ウイルス薬やワクチンはありません。 人はウイルスを持ったマダニに刺されて感染すると考えられています。 中国の調査では、マダニのウイルス保有率はかなり低いことが報告されています。
1.全国の状況
2013年12月13日までの国内の患者発生は49例で、そのうちの20例が亡くなられています。
患者発生報告のあった地域は西日本(兵庫県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、
愛媛県、高知県、佐賀県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県の13県)で、
患者の年齢は40歳代から90歳代、男性25例、女性24例でした。
これまでのところ、重症熱性血小板減少症候群は、西日本を中心に発生していますが、 国(厚生労働省研究班)が実施している調査では、患者発生のない地域でも、 マダニの調査や動物(シカ、イノシシ、猟犬)の抗体調査により、 SFTSウイルスの存在が確認されています。 (参考文献6)
県(県内累計) | 公表日 | 年齢性別 | 転帰 | 発症時期または死亡時期 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 山口県(1) | H25.1.30 | 成人女性 | 死亡 | 平成24年秋 |
2 | 愛媛県(1) | H25.2.13 | 成人男性 | 死亡 | 平成24年秋 |
3 | 宮崎県(1) | H25.2.13 | 成人男性 | 死亡 | 平成24年秋 |
4 | 広島県(1) | H25.2.19 | 成人男性 | 死亡 | 平成24年夏 |
5 | 長崎県(1) | H25.2.26 | 60歳代男性 | 死亡 | 平成17年秋 |
6 | 高知県(1) | H25.3.12 | 80歳代女性 | 生存 | 平成24年4月 |
7 | 長崎県(2) | H25.3.12 | 50歳代男性 | 生存 | 平成17年11月 |
8 | 佐賀県(1) | H25.3.12 | 80歳代男性 | 生存 | 平成22年8月 |
9 | 愛媛県(2) | H25.4.5 | 60歳代女性 | 生存 | 平成24年12月 |
10 | 鹿児島県(1) | H25.4.8 | 成人女性 | 死亡 | |
11 | 佐賀県(2) | H25.4.10 | 60歳代男性 | 死亡 | 平成24年6月 |
12 | 山口県(2) | H25.4.16 | 60歳代女性 | 死亡 | 平成25年4月 |
13 | 山口県(3) | H25.4.23 | 60歳代女性 | 生存 | 平成25年4月 |
14 | 徳島県(1) | H25.5.14 | 70歳代男性 | 生存 | 平成25年5月 |
15 | 熊本県(1) | H25.5.17 | 71歳女性 | 生存 | 平成25年5月 |
16 | 宮崎県(2) | H25.5.24 | 60歳代男性 | 生存 | 平成25年5月 |
17 | 高知県(2) | H25.5.27 | 60歳代男性 | 死亡 | 平成24年11月 |
18 | 長崎県(3) | H25.5.29 | 60歳代男性 | 生存 | 平成25年4月 |
19 | 鹿児島県(2) | H25.5.29 | 50歳代女性 | 生存 | 平成25年5月 |
20 | 広島県(2) | H25.6.3 | 60歳代女性 | 生存 | 平成25年5月 |
21 | 鹿児島県(3) | H25.6.6 | 40歳代男性 | 生存 | 平成25年5月 |
22 | 愛媛県(3) | H25.6.10 | 90歳代女性 | 死亡 | 平成25年5月 |
23 | 愛媛県(4) | H25.6.10 | 50歳代男性 | 生存 | 平成25年5月 |
24 | 愛媛県(5) | H25.6.10 | 70歳代女性 | 生存 | 平成25年5月 |
25 | 高知県(3) | H25.6.25 | 70歳代男性 | 死亡 | 平成25年5月 |
26 | 熊本県(2) | H25.7.1 | 86歳女性 | 死亡 | 平成25年5月 |
27 | 岡山県(1) | H25.7.12 | 80歳代女性 | 死亡 | 平成25年7月 |
28 | 愛媛県(6) | H25.7.12 | 70歳代男性 | 生存 | 平成25年6月 |
29 | 長崎県(4) | H25.7.17 | 50歳代女性 | 生存 | 平成25年6月 |
30 | 島根県(1) | H25.7.19 | 80歳代女性 | 生存 | 平成25年7月 |
31 | 宮崎県(3) | H25.7.22 | 80歳代女性 | 死亡 | 平成25年7月 |
32 | 山口県(4) | H25.7.23 | 90歳代女性 | 死亡 | 平成25年7月 |
33 | 岡山県(2) | H25.7.23 | 80歳代女性 | 生存 | 平成25年7月 |
34 | 鹿児島県(4) | H25.8.5 | 50歳代男性 | 生存 | 平成25年7月 |
35 | 兵庫県(1) | H25.8.6 | 70歳代女性 | 生存 | 平成25年7月 |
36 | 兵庫県(2) | H25.8.9 | 80歳代女性 | 死亡 | 平成25年5月 |
37 | 愛媛県(7) | H25.8.9 | 70歳代女性 | 生存 | 平成25年7月 |
38 | 宮崎県(4) | H25.8.15 | 60歳代女性 | 生存 | 平成25年7月 |
39 | 鹿児島県(5) | H25.8.23 | 80歳代男性 | 生存 | 平成25年8月 |
40 | 徳島県(2) | H25.9.2 | 80歳代女性 | 死亡 | 平成25年8月 |
41 | 広島県(3) | H25.9.2 | 70歳代男性 | 生存 | 平成25年8月 |
42 | 宮崎県(5) | H25.9.5 | 80歳代女性 | 生存 | 平成25年8月 |
43 | 愛媛県(8) | H25.9.13 | 90歳代男性 | 死亡 | 平成25年8月 |
44 | 広島県(4) | H25.10.17 | 70歳代男性 | 生存 | 平成25年9月 |
45 | 広島県(5) | H25.10.25 | 60歳代男性 | 生存 | 平成25年10月 |
46 | 熊本県(3) | H25.11.11 | 84歳男性 | 死亡 | 平成25年10月 |
47 | 熊本県(4) | H25.11.25 | 65歳男性 | 生存 | 平成25年11月 |
48 | 宮崎県(6) | H25.12.13 | 70歳代男性 | 生存 | 平成25年11月 |
49 | 愛媛県(9) | H25.12.13 | 60歳代男性 | 死亡 | 平成24年4月 |
(2)県毎の集計
県名 | 生存 | 死亡 | 計 |
---|---|---|---|
山口県 | 1 | 3 | 4 |
兵庫県 | 1 | 1 | 2 |
島根県 | 1 | 1 | |
岡山県 | 1 | 1 | 2 |
広島県 | 4 | 1 | 5 |
徳島県 | 1 | 1 | 2 |
愛媛県 | 5 | 4 | 9 |
高知県 | 1 | 2 | 3 |
佐賀県 | 1 | 1 | 2 |
長崎県 | 3 | 1 | 4 |
熊本県 | 2 | 2 | 4 |
宮崎県 | 4 | 2 | 6 |
鹿児島県 | 4 | 1 | 5 |
計 | 29 | 20 | 49 |
(3)年齢集計
(4)月別集計
患者の発症月別の集計です。夏、秋としているものは月別不明もの。
発症月が不明の場合は死亡月で計上しています。
参考文献5によると、 ウイルス遺伝子の分析結果からは、中国のウイルスとは遺伝子レベルで若干異なっており、 患者は国内で感染したものと考えられました。
2.中国の状況
参考文献 1
によると、SFTSと診断された中国中央部・東北部の2010年の患者(154名)は、
年齢層は中高年で(39歳〜83歳)、女性86名、男性68名でした。
ほとんどの患者(150名/154名)が森林・丘陵地に住む農業従事者でした。
発症時期は、多くが5月〜7月(148名/154名)でした。
SFTSウイルスは、国(厚生労働省研究班)の調査で、フタトゲチマダニ、ヒゲナガチマダニ、 オオトゲチマダニ、キチマダニ及びタカサゴキララマダニからSFTSウイルス遺伝子が検出されており、 今のところ患者が報告されていない地域でもSFTSウイルス保有マダニが確認されています (参考文献6)。 中国では、フタトゲチマダニ、オウシマダニからウイルスが検出されています (参考文献1、 3)。
SFTSにかからないためには、マダニに刺されないように注意することが必要です。 マダニの生息するような場所(草むらや藪など)に行く場合には なるべく肌を露出しない服装とし、後で、マダニが体に付着、あるいは マダニに刺されていないかどうかを確認してください。 「マダニ対策、今できること」 (国立感染症研究所)は、マダニ対策について、イラストを用いてわかりやすく説明しています。
マダニは野外に生息する大型のダニです。 屋内に生息するダニ(コナダニ類・チリダニ類など)はこの疾患とは関係ありません。
マダニからの感染のほかには、患者の血液等に直接接触したことによる感染が報告されています (参考文献4)。 今のところ国内では、二次感染事例はありませんが、患者の血液等体液や排泄物は、 感染性があるものとして、十分な注意が必要です。 (参考文献7)
マダニが皮膚に吸着しているのを発見した場合は、できるだけ医療機関(皮膚科) で除去してもらってください。無理に取ろうとして虫体を押しつぶした場合、 マダニの体液が人の体内に入り感染の危険性が増加します。 また、マダニの一部が皮膚内に残ると、化膿することがあります。
マダニに刺された場合は、その後の体調に注意してください。 SFTSの潜伏期間は6日〜2週間程度だといわれていますので、 2週間後くらいまでに発熱等の症状があらわれた場合は、医療機関を受診してください。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について 厚生労働省
・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A
重症熱性血小板減少症候群(SFTS) 国立感染症研究所
SFTSについて医療関係者が知っておきたいこと
国際感染症センター(国立国際医療研究センター)
1.Fever with Thrombocytopenia Associated with a Novel Bunyavirus in China
Xue-Jie Yu, et al. N Engl J Med 364:1523-1532, 2011
2.Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome Virus, Shandong Province, China
Li Zhao, et al. Emerging Infectious Diseases 18 (6), 2012
3.The Ecology, Genetic Diversity, and Phylogeny of Huaiyangshan Virus in China
Zhang YZ, et al., J Virol 86: 2864-2868, 2012
4.A Family Cluster of Infections by a Newly Recognized Bunyavirus in Eastern China, 2007: Further Evidence of Person-to-Person Transmission
Chang-jun Bao, et al. Clin Infect Dis. 53 (12): 1208-1214, 2011
5.IASR 国内で確認された重症熱性血小板減少症候群(SFTS)患者8名の概要(2013年3月13日現在)
6.IASR 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスの国内分布調査結果(第一報)(2013.8.29)
7.IASR 山口県の一医療機関における重症熱性血小板減少症候群症例の接触者調査(2013.9.24)
厚生労働省 平成25年1月30日 報道発表
中国で近年報告されている新しいダニ媒介性疾患の患者が国内で確認されました
山口県 平成25年1月30日 報道発表
「重症熱性血小板減少症候群」の症例確認について