近年では、1969年のラッサ熱の出現以降、少なくとも30以上の新興感染症の出現や、一度制圧されたかのようにみえていたマラリアや結核のような再興感染症が猛威をふるっています。また、国際交流の活発化に伴い、感染症の流行は局地的なものにとどまらず、急速に広範囲で流行する恐れがあります。
このように、地球規模で取り組む必要のある感染症の出現や、医学・医用の進歩等、感染症を取り巻く状況の著しい変化に対応するため、100年以上続いた伝染病予防法を中心に実施されてきた感染症対策を全面的に改め、感染症の予防と患者の医療に関する施策を推進する基本法として感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」 (以下、感染症法)が1999年4月に施行されました。
感染症法では、従来の感染症が発生してから防疫措置を講じるといった事後対応型行政から、普段から感染症の発生・拡大を防止することを目的とした事前対応型行政に基本的考え方を転換しています。
この事前対応型行政の感染症対策の大きな柱として感染症発生動向調査事業が位置づけられています。そして、感染症発生動向調査事業の中心的な役割を担うものとして、国立感染症研究所に中央感染症情報センターが、各都道府県に地方感染症情報センターが設置されており、山口県では環境保健センターに感染症情報センターが設置されています。
感染症の発生情報の正確な把握と分析、その結果の的確な提供は感染症対策の基本であり、すべての対策の前提となるものとされています。
感染症発生動向調査とは・・ | 感染症の患者情報・病原体情報の一元的な収集、解析、提供・公開を、医師等の医療関係者の協力を得て、全国的に実施しています。 |
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調査対象感染症の概要 |
【一類感染症】 感染力、罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点からみた危険性が極めて高い感染症 【二類感染症】 感染力、罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点からみた危険性が高い感染症 【三類感染症】 感染力、罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点からみた危険性が高くないが、特定の職業への就業によって感染症の集団発生を起こし得る感染症 【四類感染症】 人から人への感染はほとんどないが、動物、飲食物等の物件を介して感染するため、動物や物件の消毒、廃棄などの措置が必要となる感染症 【五類感染症】 国が感染症発生動向調査を行い、その結果等に基づいて必要な情報を一般国民や医療関係者に提供・公開していくことによって、発生・拡大を防止すべき感染症 【新型インフルエンザ等感染症】 新型インフルエンザ及び再興型インフルエンザ ★各類型の該当疾患は届出基準のページをご覧ください。 |
全数把握感染症と定点把握感染症 | 全数把握感染症は、一類から四類の感染症、五類の一部の感染症、新型インフルエンザ等感染症が対象で、全医療機関から発生情報を収集しています。 定点把握感染症は、全数把握感染症以外の五類感染症が対象で、指定された医療機関の協力により週単位(一部は月単位)で、情報を収集しています。 |
関係医師会等の協力を得て、県内の9つの保健所の管内人口・医療機関の分布等を勘案し、保健所毎に患者定点を選定し発生動向調査を行っています。
(参考:保健所別の定点把握協力医療機関数)
また、月に一回、解析評価小委員会を開催し、山口県の感染症の発生状況を分析しています。解析評価小委員会での分析結果等の発行物は、健康増進課から保健所・市町村・医療機関等に配布しています。
環境保健センターでは、指定した検査定点医療機関で採取された検体を検査し、どのような病原体が流行の原因になっているかを把握する取り組みを行っています。