ロタウイルス胃腸炎は、乳幼児に多い胃腸炎で、冬から春にかけて流行します。 嘔吐・下痢・発熱を示し、脱水などで入院治療をしなければならなくなることもあり、 特に生後6ヶ月〜2歳未満では重症化しやすいといわれています。 乳幼児に胃腸炎をおこすウイルス・細菌がいろいろとある中でも、 ロタウイルスは重症の胃腸炎をおこしやすいウイルスです。
感染は、患者の糞便・嘔吐物中のウイルスが、手指、器具、食品などを介して口から入っておこります。 よく手洗いをすること、汚染された物の消毒をすることによって予防をしますが、 ウイルスは環境中で比較的安定で、少量でも発病することから、ウイルスを完全に避けることは困難です。 また、発病するとよく効く治療薬がなく、治療は対症療法が中心です。
ロタウイルスに対するワクチンがありますので、 これを受けておくことが発病予防・重症化予防になります。
ワクチン接種は、生後6週間から24週間(6ヶ月弱)頃までに行うもので、 チューブに入ったシロップ状の液体を飲ませる方式です。 接種にかかる費用は、医療機関によって異なりますが、 3万円程度です(ロタリックス、2回の場合)。
ワクチン接種を受けさせたい場合は、かかりつけの小児科医・医療機関にお尋ねください。
現在(平成24年5月)日本で使用されているのは、平成23年11月に発売された ロタリックス(グラクソ・スミスクライン株式会社)です。また、ロタテック(MSD株式会社)が 平成24年1月に製造販売承認を受け、発売準備中です。
ロタリックスは、ヒトのロタウイルス株から作られた弱毒生ワクチンです。生後6週から24週齢の期間に、 4週間以上の間隔をおいて2回経口接種します。基になったウイルス株の型はG1P[8]ですが、 他の型に対しても効果があり、G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8]のウイルスによる胃腸炎に対して有効です。
ロタテックも弱毒生ワクチンで、3回経口接種します。 ウシロタウイルスを基にした5つの血清型のロタウイルス株からなる5価のワクチンです。 G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8]による胃腸炎に対して有効です。
この2製品は、諸外国では2004年から使用され、重症胃腸炎を減少させる成果をあげています 3)。ロタウイルスは、レオウイルス科ロタウイルス属の2本鎖RNAウイルスで、哺乳類・鳥類に感染します。 各動物のロタウイルスは別のロタウイルスであり、 通常、動物のロタウイルスがヒトに病気をおこすことはありません。
ロタウイルスは、血清型・遺伝子型により分類されます。 まず、中間殻のVP6の抗原性によるA〜G群の7つの血清群があります。ヒトからはA〜C群が検出されます。 通常、乳幼児の急性胃腸炎の原因となるのはA群で、ときにC群がみられます。 さらに、外殻のVP7とVP4による、G型とP型の分類があります。 型表記は、P型が血清型と遺伝子型がは統一されておらず別表記となるので、 遺伝子型は[ ]で囲み、 G型P血清型[P遺伝子型]のように表記します。例えば、ロタリックスの基になったウイルス株の型は G1P1A[8]ですが、これは、G型が1、P血清型が1A、P遺伝子型が8という意味です。 乳幼児のロタウイルス胃腸炎の原因で最も多いのはG1P[8]で、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8]とあわせて 約9割を占めています。
1)IASR(No.373) Vol.32 No.3 March 2011 ロタウイルス特集(国立感染症研究所)
2)ロタウイルスによる感染性胃腸炎について(横浜市衛生研究所)
3)Reduction in Rotavirus After Vaccine Introduction(CDC)
4)わが国にロタウイルスワクチンは必要か?(モダンメディア)
5)The Pink Book (Rotavirus)(CDC)