平成24年5月18日

ロタウイルスワクチンについて

ロタウイルス胃腸炎は、感染力が強く、予防が難しい病気でしたが、 昨年(平成23年11月)より、日本でもロタウイルスワクチン接種が受けられるようになりました。 費用は自己負担となりますが、生後6ヶ月未満のお子様の保護者の方は、 接種を受けさせるかどうかをご検討ください。

ロタウイルス胃腸炎とは?

ロタウイルス胃腸炎は、乳幼児に多い胃腸炎で、冬から春にかけて流行します。 嘔吐・下痢・発熱を示し、脱水などで入院治療をしなければならなくなることもあり、 特に生後6ヶ月〜2歳未満では重症化しやすいといわれています。 乳幼児に胃腸炎をおこすウイルス・細菌がいろいろとある中でも、 ロタウイルスは重症の胃腸炎をおこしやすいウイルスです。

予防と治療

感染は、患者の糞便・嘔吐物中のウイルスが、手指、器具、食品などを介して口から入っておこります。 よく手洗いをすること、汚染された物の消毒をすることによって予防をしますが、 ウイルスは環境中で比較的安定で、少量でも発病することから、ウイルスを完全に避けることは困難です。 また、発病するとよく効く治療薬がなく、治療は対症療法が中心です。

ロタウイルスに対するワクチンがありますので、 これを受けておくことが発病予防・重症化予防になります。

ワクチン接種は、生後6週間から24週間(6ヶ月弱)頃までに行うもので、 チューブに入ったシロップ状の液体を飲ませる方式です。 接種にかかる費用は、医療機関によって異なりますが、 3万円程度です(ロタリックス、2回の場合)。

ワクチン接種を受けさせたい場合は、かかりつけの小児科医・医療機関にお尋ねください。

ワクチン

現在(平成24年5月)日本で使用されているのは、平成23年11月に発売された ロタリックス(グラクソ・スミスクライン株式会社)です。また、ロタテック(MSD株式会社)が 平成24年1月に製造販売承認を受け、発売準備中です。

ロタリックスは、ヒトのロタウイルス株から作られた弱毒生ワクチンです。生後6週から24週齢の期間に、 4週間以上の間隔をおいて2回経口接種します。基になったウイルス株の型はG1P[8]ですが、 他の型に対しても効果があり、G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8]のウイルスによる胃腸炎に対して有効です。

ロタテックも弱毒生ワクチンで、3回経口接種します。 ウシロタウイルスを基にした5つの血清型のロタウイルス株からなる5価のワクチンです。 G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8]による胃腸炎に対して有効です。

この2製品は、諸外国では2004年から使用され、重症胃腸炎を減少させる成果をあげています 3)

ウイルス

rotavirus

ロタウイルスは、レオウイルス科ロタウイルス属の2本鎖RNAウイルスで、哺乳類・鳥類に感染します。 各動物のロタウイルスは別のロタウイルスであり、 通常、動物のロタウイルスがヒトに病気をおこすことはありません。

ロタウイルスは、血清型・遺伝子型により分類されます。 まず、中間殻のVP6の抗原性によるA〜G群の7つの血清群があります。ヒトからはA〜C群が検出されます。 通常、乳幼児の急性胃腸炎の原因となるのはA群で、ときにC群がみられます。 さらに、外殻のVP7とVP4による、G型とP型の分類があります。 型表記は、P型が血清型と遺伝子型がは統一されておらず別表記となるので、 遺伝子型は[ ]で囲み、 G型P血清型[P遺伝子型]のように表記します。例えば、ロタリックスの基になったウイルス株の型は G1P1A[8]ですが、これは、G型が1、P血清型が1A、P遺伝子型が8という意味です。 乳幼児のロタウイルス胃腸炎の原因で最も多いのはG1P[8]で、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8]とあわせて 約9割を占めています。

関係リンク

1)IASR(No.373) Vol.32 No.3 March 2011 ロタウイルス特集(国立感染症研究所)
2)ロタウイルスによる感染性胃腸炎について(横浜市衛生研究所)
3)Reduction in Rotavirus After Vaccine Introduction(CDC)
4)わが国にロタウイルスワクチンは必要か?(モダンメディア)
5)The Pink Book (Rotavirus)(CDC)