環境保健研究センター
HOME > 水質部 > 有害化学物質に関わる生物モニタリングに関する研究

有害化学物質に関わる生物モニタリングに関する研究


 イボニシは腹足綱アクキガイ科に属する海産巻貝であるが、近年TBTなどの有機スズ化合物の影響により、雌にペニス等の雄性生殖器が形成されるImposex現象が明らかとなっている。
 そこで、平成12年度に瀬戸内海沿岸12地点で採取したイボニシについてImposex現象の実態を調査し、あわせてイボニシ体内のTBT及び微量金属10種の分析を行った。
  この結果、イボニシのImposex現象は全調査地点で認められ、その出現率も12地点中10地点が100%であり、正常な個体は2地点のみで若干認められたにすぎなかった。雌に生じたペニスのRPL(相対的ペニス長指数=雄のペニス長の平均値に対する雌のそれの割合%)をみると11〜78%で地点差が大きく、イボニシ体内のTBT濃度が高い地点ほど高い傾向が認められた。
 なお、TBTの濃度レベルは16〜190ng/g.wetであった。微量金属の濃度レベルについては、バナジウム0.09〜0.50μg/g・wet、クロム0.59〜5.9μg/g・wet、マンガン1.4〜3.5μg/g・wet、ニッケル0.3〜2.3μg/g・wet、亜鉛81〜250μg/g・wet、モリブデン<0.002〜0.28μg/g・wet、カドミウム0.79〜2.6μg/g・wet、アンチモン0.005〜0.13μg/g・wet、鉛0.57〜8.8μg/g・wet、ウラン0.03〜0.13μg/g・wetであった。一般の海産貝類と同様、亜鉛が高濃度で、次に鉛、マンガンの濃度が比較的高いことがわかった。カドミウム、ニッケル、クロム、バナジウム及びモリブデンはそれぞれ同レベルの濃度で検出され、アンチモン、ウランは他に比べると低濃度であった。どの金属も地点差があり、特にモリブデン、アンチモンはそれが顕著であることから人間活動を反映している可能性が考えられる。

環境保健研究センター    山口県環境保健研究センター