山口県感染症情報センター

感染症法に基づく消毒・滅菌の手引き

平成16年1月30日健感発第0130001号
厚生労働省健康局結核感染症課長通知

 ■ 一類感染症

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エボラ出血熱

  1. はじめに
     1976 年に,スーダンとコンゴ民主共和国(旧ザイール)で確認されたウイルス性出血熱の一種で, 高熱と出血傾向などを主症状とする急性感染症である。感染源は動物(自然宿主)と考えられている。

  2. 感染経路
    1. 患者の血液の誤刺
    2. 患者の血液,尿,糞便,吐物および分泌物などへの接触
    3. 患者との濃厚接触

  3. 患者への対応
     原則として入院。第一種感染症指定医療機関(各都道府県に原則的に1か所)への入院を勧告する。

  4. 患者環境および観血的処置時の対策
     血液や体液などに起因する汚染拡散に留意する。 そのためにはシングルユース(ディスポーザブル)のシーツ,覆布,滅菌ドレープ類,ガウンその他を利用する。
     シングルユースの汚染物はプラスチック袋で二重に密閉し,外袋を消毒した後に運搬し,高温焼却する。 再使用器械・器材類は,密閉用容器(回収用コンテナなど)に密閉して,容器の外側を消毒した後に運搬し,適切に消毒または滅菌処理する。
     針刺しや切創に注意し,血液飛沫を受けないような防御を行って臨む。

  5. 医療従事者への注意
     エボラウイルスはエンベロープと呼ばれる膜を持つウイルスであり,消毒薬抵抗性は高くない。 しかし,エボラ出血熱の致死率は53〜88%と高いことから,厳重な消毒が必要である。 また,消毒の際は手袋,ガウンおよびシューカバーなどを着用して行う。 患者に咳嗽があれば,マスクやゴーグルなども着用する。
     なお,患者病室から物品を運び出す際には,プラスチック袋で二重に密閉し,外側を0.05%(500ppm)次亜塩素酸ナトリウムで清拭する。

  6. 汚染物の消毒・滅菌
    (1)対象
       ①患者の血液,分泌物および排泄物
       ②患者が使用した物品や病室

    (2)消毒薬
     患者の体液や排泄物などの消毒には,次亜塩素酸ナトリウム(ミルトン®, ピューラックス®, テキサント®, ハイポライト®など) やジクロルイソシアヌール酸ナトリウム顆粒(プリセプト顆粒®)を用いる。 また,金属製小物などにはグルタラール(グルタルアルデヒド:ステリハイド®, グルトハイド®, サイデックス®など)などが適している。 なお,アルコール(消毒用エタノール,70v/v%イソプロパノール)も使用可能である。
2014年西アフリカのエボラ出血熱流行を受けての補足     (H26.10.29)

上記のように、エボラウイルスには、一般的な消毒薬(次亜塩素酸ナトリウム、アルコール等)が 有効です。(例:5000ppmと500ppmの次亜塩素酸ナトリウム溶液を用意しておき、 汚物の消毒には5000ppm溶液を、眼に見える汚れが無いところには500ppm溶液を使用する)

今回の流行では、医療従事者の二次感染が問題となっています。 患者は、嘔吐・下痢が激しく、大量のウイルスを排泄していると考えられますので、 患者との接触は、適切な防護服を着用してする必要があります。 また、使用後の防護服を脱ぐ際に感染する危険性が指摘されており、 医療従事者は正しい防護服着脱手順を身につけておく必要があります。

防護服を脱ぐ際にも、汚染の可能性がある部分を消毒するために消毒薬を使用します。 CDCの防護服に関する手引き では、(エボラウイルスより消毒薬抵抗性が高い)ノロウイルス等を消毒できる医療用消毒薬を使用し、 手袋を脱いだ後の手指の消毒にはアルコールを主成分とした手指消毒薬を使用することを推奨しています。


エボラ出血熱について(厚生労働省)
エボラ出血熱(国立感染症研究所)
Ebola virus disease(WHO)
Ebola (Ebola Virus Disease) (CDC)
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マールブルグ病

  1. はじめに
     エボラ出血熱と同様に,ウイルス性出血熱の一種で,感染源は不明である(マールブルグウイルス の保有動物は判明していない)。

  2. 感染経路
    1. 患者の血液の誤刺
    2. 患者の血液,尿,糞便,吐物および分泌物などへの接触
    3. 患者との濃厚接触

  3. 患者への対応
     原則として入院。第一種感染症指定医療機関(各都道府県に原則的に1か所)への入院を勧告する。

  4. 患者環境および観血的処置時の対策
     血液や体液などに起因する汚染拡散に留意する。 そのためにはシングルユース(ディスポーザブル) のシーツ,覆布,滅菌ドレープ類,ガウンその他を利用する。 シングルユースの汚染物はプラスチック袋で二重に密閉し,外袋を消毒した後に運搬し,高温焼却する。 再使用器械・器材類は,密閉用容器(回収用コンテナなど)に密閉して,容器の外側を消毒した後に運搬し,適切に消毒または滅菌処理する。 針刺しや切創に注意し,血液飛沫を受けないような防御を行って臨む。

  5. 医療従事者への注意
     マールブルグウイルスはエンベロープを持つウイルスであり,消毒薬抵抗性は高くない。 しかし,マールブルグ病の致死率は23%との報告もあるので,厳重な消毒が必要である。
     また,消毒の際は手袋,ガウンおよびシューカバーなどを着用して行う。 患者に咳嗽があれば,マスクやゴーグルなども着用する。
     消毒後の物品に対しては,可能なら高圧蒸気滅菌を行う。 なお,患者病室から物品を運び出す際には,物品を収めたプラスチック袋などの消毒も必要となる。 二重にしたプラスチック袋の外側を0.05%(500ppm)次亜塩素酸ナトリウムで清拭する。

  6. 汚染物の消毒・滅菌
    (1)対象
       ①患者の血液,分泌物および排泄物
       ②患者が使用した物品や病室

    (2)消毒薬
     患者の体液や排泄物などの消毒には,次亜塩素酸ナトリウム(ミルトン®, ピューラックス®, テキサント®, ハイポライト®など) やジクロルイソシアヌール酸ナトリウム顆粒(プリセプト顆粒®)を用いる。 また,金属製小物などにはグルタラール(ステリハイド®, グルトハイド®, サイデックスなど)などが適用している。 なお,アルコール(消毒用エタノール,70v/v%イソプロパノール)も使用可能である。
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クリミア・コンゴ出血熱

  1. はじめに
     ウイルス性出血熱の一種で,アフリカ・東欧・中近東・中央アジア・インド・中国北西部の地方病 である。
     クリミア・コンゴ出血熱ウイルスの保有動物はウシ,ヒツジなどであり,媒介動物はダニである。

  2. 感染経路
    1. 患者の血液の誤刺
    2. 患者の血液,尿,糞便,吐物および分泌物などへの接触
    3. 患者との濃厚接触

  3. 患者への対応
     原則として入院。第一種感染症指定医療機関(各都道府県に原則的に1か所)への入院を勧告する。

  4. 患者環境および観血的処置時の対策
     血液や体液などに起因する汚染拡散に留意する。 そのためにはシングルユース(ディスポーザブル)のシーツ,覆布,滅菌ドレープ類,ガウンその他を利用する。
     シングルユースの汚染物はプラスチック袋で二重に密閉し,外袋を消毒した後に運搬し,高温焼却する。 再使用器械・器材類は,密閉用容器(回収用コンテナなど)に密閉して,容器の外側を消毒した後に運搬し,適切に消毒または滅菌処理する。
     針刺しや切創に注意し,血液飛沫を受けないような防御を行って臨む。

  5. 医療従事者への注意
     クリミア・コンゴ出血熱ウイルスはエンベロープを持つウイルスであり,消毒薬抵抗性は高くない。 しかし,クリミア・コンゴ出血熱の致死率は15〜70%と高いことから,厳重な消毒が必要である。
     また,消毒の際は手袋,ガウンおよびシューカバーなどを着用して行う。 患者に咳嗽があれば,マスクやゴーグルなども着用する。
     消毒後の物品に対しては,可能であれば高圧蒸気滅菌を行う。 なお,患者病室から物品を運び出す際には,物品を収めたプラスチック袋などの消毒も必要となる。 二重にしたプラスチック袋の外側を0.05%(500ppm)次亜塩素酸ナトリウムで清拭する。

  6. 汚染物の消毒・滅菌
    (1)対象
       ①患者の血液,分泌物および排泄物
       ②患者が使用した物品や病室

    (2)消毒薬
     患者の体液や排泄物などの消毒には,次亜塩素酸ナトリウム(ミルトン®, ピューラックス®, テキサント®, ハイポライト®など) やジクロルイソシアヌール酸ナトリウム顆粒(プリセプト顆粒®)を用いる。 また,金属製小物などにはグルタラール(ステリハイド®, グルトハイド®, サイデックス®など)などが適している。 なお,アルコール(消毒用エタノール,70v/v%イソプロパノール)も使用可能である。
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ペスト

  1. はじめに
     リンパ節腫脹や高熱などを主症状とする急性細菌感染症である。腺ペストと肺ペストの2型に分類される10,11)
     ペスト菌( Yersinia pestis)の保有動物はネズミやリスなどであり,媒介動物はノミである。

  2. 感染経路
     肺ペスト患者の飛沫の吸入や腺ペスト患者の膿への接触。敗血症型では血液に対する注意が必要で ある。

  3. 患者への対応
     原則として入院。第一種感染症指定医療機関(各都道府県に原則的に1か所)への入院を勧告する。

  4. 患者環境および観血的処置時の対策
     気道分泌物などに起因する汚染拡散に留意する。 そのためにはシングルユース(ディスポーザブル)のシーツ,覆布,滅菌ドレープ類,ガウンその他を利用する。
     シングルユースの汚染物はプラスチック袋で二重に密閉し,外袋を消毒した後に運搬し,高温焼却する。 再使用器械・器材類は,密閉用容器(回収用コンテナなど)に密閉して,容器の外側を消毒した後に運搬し,適切に消毒または滅菌処理する。
     針刺しや切創に注意し,血液飛沫を受けないような防御を行って臨む。

  5. 医療従事者への注意
     肺ペストは飛沫で伝播する。したがって,肺ペストの伝播防止にはマスクの着用が重要である。

  6. 汚染物の消毒・滅菌
    (1)対象
     肺ペストは飛沫感染ではあるが,肺ペスト患者が使用した物品や病室の消毒も行う。 また,患者の喀痰は焼却処分とする。
    (2)消毒薬
     ペスト菌に対しては,すべての消毒薬が有効である。 第四級アンモニウム塩(オスバン®, オロナイン-K®, ヂアミトール®, ハイアミン®など)や 両性界面活性剤(テゴー51®, エルエイジー®など), アルコール(消毒用エタノール,70v/v%イソプロパノール)などを用いる。
     また,80℃・10 分間の熱水も有効である(70℃・1分間や80℃・10 秒間などの熱水でも有効と推定されるが,安全を見込んで80℃・10 分間とする)。
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ラッサ熱

  1. はじめに
     1969 年にナイジェリアで確認されたウイルス性出血熱の一種で,西アフリカの地方病である。
     ラッサウイルスの自然宿主動物はネズミ(Mastomys natalensis)である。

  2. 感染経路
    1. 患者の血液の誤刺
    2. 患者の血液,尿,糞便,吐物および分泌物などへの接触
    3. 患者との濃厚接触

  3. 患者への対応
     原則として入院。第一種感染症指定医療機関(各都道府県に原則的に1か所)への入院を勧告する。
  4. 患者環境および観血的処置時の対策
     血液や体液などに起因する汚染拡散に留意する。 そのためにはシングルユース(ディスポーザブル)のシーツ,覆布,滅菌ドレープ類,ガウンその他を利用する。
     シングルユースの汚染物はプラスチック袋で二重に密閉し,外袋を消毒した後に運搬し,高温焼却する。 再使用器械・器材類は,密閉用容器(回収用コンテナなど)に密閉して,容器の外側を消毒した後に運搬し,適切に消毒または滅菌処理する。
     針刺しや切創に注意し,血液飛沫を受けないような防御を行って臨む。
     エアロゾルでの感染事例は報告されていない。

  5. 医療従事者への注意
     ラッサウイルスはエンベロープを持つウイルスであり,消毒薬抵抗性は高くない。 しかし,ラッサ熱の致死率は15〜20%と高いことから,厳重な消毒が必要である。
     また,消毒の際は手袋,ガウンおよびシューカバーなどを着用して行う。 患者に咳嗽があれば,マスクやゴーグルなども着用する。
     消毒後の物品に対しては,可能であれば高圧蒸気滅菌を行う。 なお,患者病室から物品を運び出す際には,物品を収めたプラスチック袋などの消毒も必要となる。 二重にしたプラスチック袋の外側を0.05%(500ppm)次亜塩素酸ナトリウムで清拭する。

  6. 汚染物の消毒・滅菌
    (1)対象
       ①患者の血液,分泌物および排泄物
       ②患者が使用した物品や病室

    (2)消毒薬
     患者の体液や排泄物などの消毒には,次亜塩素酸ナトリウム(ミルトン®, ピューラックス®, テキサント®, ハイポライト®など) やジクロルイソシアヌール酸ナトリウム顆粒(プリセプト顆粒®)を用いる。 また,金属製小物などにはグルタラール(ステリハイド®, グルトハイド®, サイデックス®など)などが適している。 なお,アルコール(消毒用エタノール,70v/v%イソプロパノール)も使 用可能である。
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重症急性呼吸器症候群(病原体がSARS コロナウイルスであるものに限る。)

  1. はじめに
     コロナウイルス科の新しい型のウイルスであるSARS コロナウイルスにより発症する。 2002 年11 月に中国広東省で初めての患者が確認され,2003 年7月末までに計8,098 名の患者が29 の国・地域で報告されている。

  2. 感染経路
    1. 飛沫感染,接触感染によるヒトからヒトへの感染が主。
    2. 糞便からの糞口感染,空気感染の可能性なども完全に否定することはできないが,その頻度は低い。

  3. 患者への対応
     原則として入院。第一種感染症指定医療機関(各都道府県に原則的に1か所)への入院を勧告する。

  4. 患者環境および観血的処置時の対策
     咳,くしゃみによる飛沫は1.5 メートル以内の範囲に拡散するので,患者には通常のマスクを使用する。 また,その際に口を覆った手指の洗浄,速乾性擦式アルコール製剤などによる消毒を励行する。 喀痰,血液や体液などに起因する汚染拡散に留意する。そのためにはシングルユース(ディスポーザブル)のシーツ,覆布,滅菌ドレープ類,ガウンその他を利用する。
     シングルユースの汚染物はプラスチック袋で二重に密閉し,外袋を消毒した後に運搬し,高温焼却する。 再使用器械・器材類は,密閉用容器(回収用コンテナなど)に密閉して,容器の外側を消毒した後に運搬し,適切に消毒または滅菌処理する。
     針刺しや切創に注意し,血液飛沫を受けないように防御を行って臨む。

  5. 医療従事者への注意
     SARS コロナウイルスはエンベロープを持つウイルスであり,本ウイルスの消毒薬抵抗性は高くない。
     しかし,SARS 感染者の21%は医療従事者が占めること,SARS の致死率は9.6%と高いこと, さらに,本ウイルスに関する詳細についてはいまだ明らかにされていないことなどから厳重な消毒が必要である。
     消毒の実施は,マスク,ガウン,手袋,シューカバー,キャップを含む防護服を着用して行う。
     消毒後の物品に対しては,可能であれば高圧蒸気滅菌を行う。 なお,患者病室から物品を運び出す際には,物品を収めたプラスチック袋などの消毒も必要となる。 プラスチック袋の外側を0.05%(500ppm)次亜塩素酸ナトリウムで清拭する。
     使用後の防護服はバイオハザードバッグに入れ,高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)後に廃棄とする。
     ただし,防護服をやむをえず再使用する場合には,水溶性ランドリーバッグに入れた後にプラスチック袋に密閉して運び出し,80℃・10 分間などの熱水洗濯を行う。

  6. 汚染物の消毒
     患者が使用した物品や病室が消毒対象となる。 一方,SARS コロナウイルスに対しては,グルタラール(ステリハイド®, グルトハイド®, サイデックス®など), フタラール(ディスオーパ®), 過酢酸(アセサイド®), 次亜塩素酸ナトリウム(ミルトン®, ピューラックス®, テキサント®, ハイポライト®など), アルコール(消毒用エタノール,70v/v%イソプロパノール)およびポビドンヨード(イソジン®, ポピヨドン®, ネオヨジン®など) などの消毒薬や,80℃・10 分間などの熱水が有効である。
    オーバーテーブル,ベッド柵,椅子,ドアノブ,洋式トイレの便座,および水道ノブなどには,アルコール清拭で対応する。 また,ベッドマット,毛布,シーツ,および下着などのリネン類に対しては,80℃・10 分間の熱水洗濯が適している。 ただし,熱水洗濯機の設備がない場合には,0.05〜0.1%(500〜1,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムへの30 分間浸漬で対応する。 なお,手指消毒には,消毒用エタノールを主成分とする速乾性手指消毒薬が適している。
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痘そう、天然痘

  1. はじめに
     1980 年にWorld Health Organization (WHO)が天然痘の世界根絶宣言を行っており,現在,痘そう ウイルス(ポックスウイルス科オルトポックスウイルス)は自然界には存在しないが,研究目的で米 国疾病管理センター(Centers for Disease Control and Prevention (CDC))とモスクワの研究所に 保管された。モスクワの分は旧ソ連の崩壊時,それらがノボシビルスク近郊の軍事基地に移され,封 印が解かれ研究が開始された経緯がある。米国疾病管理センターが痘そうを,特に危険性が高く最優 先して対策を立てる必要がある「カテゴリーA」の生物兵器として位置づけるなど,生物テロによる 被害の発生が懸念されている。

  2. 感染経路
    飛沫およびエアロゾルによりヒトからヒトへと感染する。

  3. 患者への対応
     原則として入院。第一種感染症指定医療機関(各都道府県に原則的に1か所)への入院を勧告する。

  4. 患者環境および観血的処置時の対策
     血液や体液および患者気道分泌物,呼気に起因する汚染拡散に留意する。 そのためにはシングルユース(ディスポーザブル)のシーツ,覆布,滅菌ドレープ類,ガウンその他を利用する。
     シングルユースの汚染物はプラスチック袋で二重に密閉し,外袋を消毒した後に運搬し,焼却する。
     再使用器械・器材類は,密閉用容器(回収用コンテナなど)に密閉して,容器の外側を消毒した後に運搬し,適切に消毒または滅菌処理する。
     針刺しや切創に注意し,血液飛沫を受けないように防御を行って臨む。

  5. 医療従事者への注意
     痘そうウイルスはエンベロープを持つウイルスであり,本ウイルスの消毒薬抵抗性は高くない。 しかし,本ウイルスは落屑中で年余にわたり生存でき,また痘そうの致死率は50%にも及ぶ。 厳重な消毒が必要である。 落屑・痂皮はすべて集め,滅菌する。
     予防接種のためのワクチンが各都道府県に配布されている。 米国において痘そうワクチン接種後の心合併症が報告されたが,因果関係は否定されている。 消毒は,過去3年以内に予防接種を受けたスタッフが,マスク,ガウン,手袋,シューカバー,キャップを含む防護服を着用して実施する。
     消毒後の物品に対しては,可能であれば高圧蒸気滅菌を行う。 なお,患者病室から物品を運び出す際には,物品を収めたプラスチック袋などの消毒も必要となる。 プラスチック袋の外側を0.05%(500ppm)次亜塩素酸ナトリウム(ミルトン®, ピューラックス®, テキサント®, ハイポライト®など)で清拭する。 また,使用後の防護服はプラスチック袋で二重に密閉し,外袋を消毒した後に運搬し,高温焼却する。 ただし,防護服をやむをえず再使用する場合には,水溶性ランドリーバッグに入れた後にプラスチック袋に密閉して運び出し,80℃・10 分間などの熱水洗濯を行う。

  6. 汚染物の消毒・滅菌
    (1)対象
     患者が使用した物品や病室が消毒・滅菌の対象になる。特に,唾液,気道分泌物,痘疱内容,落屑 などが付着した可能性のある物品(マクラやシーツなど)に対する消毒や滅菌が重要である。なお, 落屑の飛散防止のため,物品などの取り扱い時にはチリやホコリが舞い上がらないように注意を払う。
    (2)消毒薬
     器械に対しては,2〜3.5%グルタラール(ステリハイド®, グルトハイド®, サイデックス®など)や 0.55%フタラール(ディスオーパ®)への30 分間浸漬, 0.3%過酢酸(アセサイド®)への10 分間浸漬などを行う。 また,環境に対してはアルコール(消毒用エタノール,70v/v%イソプロパノール)や次亜塩素酸ナトリウム(汚れがあれば0.5%(5,000ppm), 汚れがなければ0.05%(500ppm))での清拭を行う。
    (3)熱による消毒
     80℃・10 分間などの熱水や蒸気が有効である。器材に対してはウオッシャーディスインフェクター (93℃・10 分間などの熱水)を,リネン類には熱水洗濯機(80℃・10 分間などの熱水)を用いる。
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