山口県感染症情報センター

感染症法に基づく消毒・滅菌の手引き

平成16年1月30日健感発第0130001号
厚生労働省健康局結核感染症課長通知

 感染症の病原体で汚染された機器・器具・環境の消毒・滅菌は, 適切かつ迅速に行って,汚染拡散を防止しなければならない。

 手袋,帽子,ガウン,覆布(ドレープ),機器や患者環境の被覆材などには, 可能なかぎり使い捨て製品を使用する。使用後は,専用の感染性廃棄物用容器に密閉するか, あるいはプラスチック袋に二重に密閉したうえで,外袋表面を清拭消毒して患者環境(病室など)より持ち出し,焼却処理する。

 汚染した再使用器具は,ウォッシャーディスインフェクター, フラッシュイングディスインフェクター,またはその他の適切な熱水洗浄消毒器で処理するか, あるいは消毒薬に浸漬処理(付着汚染物が洗浄除去しにくくなることが多い)したうえで, 用手洗浄を行う。そのうえで,滅菌などの必要な処理を行った後,再使用に供する。 汚染した食器,リネン類は,熱水洗浄消毒または消毒薬浸漬後,洗浄を行う。

 汚染した患者環境,大型機器表面などは,血液等目に見える大きな汚染物が付着している場合は, まずこれを清拭除去したうえで(消毒薬による清拭でもよい),適切な消毒薬を用いて清拭消毒する。 清拭消毒前に,汚染微生物量を極力減少させておくことが清拭消毒の効果を高めることになる。

 消毒薬処理は,滅菌処理と異なり,対象とする微生物の範囲が限られており, その抗菌スペクトルからはみ出る微生物が必ず存在し,条件が揃えば消毒薬溶液中で生存増殖する微生物もある。 したがって,対象微生物を考慮した適切な消毒薬の選択が必要である。



概要


■一類感染症

  消毒のポイント 消毒法
エボラ出血熱
マールブルグ病
クリミア・コンゴ出血熱
ラッサ熱
厳重な消毒が必要である。
患者の血液・分泌物・排泄物、およびこれらが付着した可能性のある箇所を消毒する。
  • 80℃・10分間の熱水
  • 抗ウイルス作用の強い消毒薬
    • 0.05〜0.5%(500〜5000ppm)次亜塩素酸ナトリウムで清拭*、 または30分間浸漬
    • アルコール(消毒用エタノール、70v/v%イソプロパノール)で清拭、または30分間浸漬
    • 2〜3.5%グルタラールに30分間浸漬**
ペスト 肺ペストは飛沫感染であるが、患者に用いた機器や患者環境の消毒を行う。
  • 80℃・10分間の熱水
  • 消毒薬
    • 0.1w/v%第四級アンモニウム塩または両性界面活性剤に30分間浸漬
    • 0.2w/v%第四級アンモニウム塩または両性界面活性剤で清拭、または30分間浸漬
    • 0.01〜0.1%(100〜1000ppm)次亜塩素酸ナトリウムに30分間浸漬
    • アルコールで清拭
重症急性呼吸器症候群(SARS)
痘そう(天然痘)
患者環境などの消毒を行う。 エボラ出血熱と同様


■二類感染症

  消毒のポイント 消毒法
急性灰白髄炎
(ポリオ)
患者の糞便で汚染された可能性のある箇所を消毒する。 エボラ出血熱と同様
コレラ
細菌性赤痢
患者の糞便で汚染された可能性のある箇所を消毒する。 ペストと同様
ジフテリア 皮膚ジフテリアなどを除き飛沫感染であるが、患者に用いた機器や患者環境を消毒する。
腸チフス
パラチフス
患者の糞便・尿・血液で汚染された可能性のある箇所を消毒する。

* 血液などの汚染に対しては0.5%(5000ppm)、または明らかな血液汚染がない場合には0.05%(500ppm)を用いる。 なお、血液などの汚染に対しては、ジクロルイソシアノール酸ナトリウム顆粒も有効である。
** グルタラールに代わる方法として、0.55%フタラールへ30分間浸漬や、0.3%過酢酸への10分間浸漬があげられる。

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各論

  1. 一類感染症
  2. 二類感染症
  3. 三類感染症
  4. 四類感染症
    1. ウイルスの四類感染症
    2. クラミジアの四類感染症
    3. リケッチアの四類感染症
    4. スピロヘータの四類感染症
    5. 原虫の四類感染症
    6. 蠕虫の四類感染症
    7. 真菌の四類感染症
    8. 芽胞形成菌の四類感染症
    9. その他の細菌の四類感染症

  5. (参考)五類感染症

消毒薬一覧


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